愛しいあなたへ~song for you~
西島だった。
「お前どこ行くつもりだよ!」
振り返ると、
俺を睨みつけていた。
「美由ちゃんの事、
振っておいて、
さらに追い掛けるな!!
…お前、最低だぞ?」
何だって??
意味が分からない。
俺が…美由を振った?
そんな馬鹿な…。
「お前なぁ…。
いつの間に
友香ちゃんと
親しい関係になったんだよ?
付き合ってんだろ?」
はぁ?
他のクラスの奴も話し始めた。
「篤司君だから、仕方ないよ。」
「でも、美由ちゃん
すごくかわいそうだったよ。」
「美由ちゃんピアノ上手過ぎだよね。
感情がメッチャ、こもってた!」
「テープで聞いた時は、
そうでも無かったけど、
実際で聞くと、感動しちゃった。」
「切ない!切な過ぎ!」
嘘だろ…?
誤解だ。
そんなの…。
「…!!」
「おい!篤司!
さっきから、
人の話聞いてんのかよ?!」
追い掛けようとする俺を
また、西島が止めた。
「美由…そんな…。」
側で聞いていた
友香ちゃんが
泣き崩れるように、
その場にしゃがみ込んだ。
「とりあえず、
今は美由ちゃんを、
そっと、
させておいてあげろよ。
言い訳でも、なんでも、
明日で十分だろ?」
…西島の言葉に、
動けなくなった。
俺は、
美由の事、泣かせたんだ。
あの時の固まった顔を見て、
ようやく気付いた。
俺って、結局、
美由に
嫌われたくない
だけじゃないか?
最低だ。