嘘と秘密~悲しいラヴァーズ~
「…もしかして映画館にいた…?」


声は普通。


震えてもいないし、強張ってもいない。


でも私を見ている目が想像以上に真っ直ぐ。


驚くほど。


その視線からは逃げ出せそうにもない。


あいにく、電車は来ない。


タイミングが悪いな…。


「行ったけど…。春山くんも?」


嘘をついたところで意味がない。


「まぁ…」


春山くんは気まずそうな顔をする。


そしてバツが悪そうに笑う。


私もつられて笑う。


ちゃんと笑えているかは別として。


春山くんが何を見てしまったかは分かるよ。


…言いたいことだって…。


「是永は…」


言いかけときながら春山くんは口を噤んだ。


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