それいけヒーロー部

誘われるがままに入ったコーヒーショップはいつもマリリンと入っている店だったため、余計に警戒心がそがれてしまった。


ちなみにあたしの家は駅の裏側をさらにすこし自転車で走ったところにあり、マリリンは電車通学なので駅までは一緒に帰ってくる。



席に着くと早速海先輩の友達が話しだした。





「改めまして、自己紹介するね。

オレ、海の友達で篠宮壮志っていいます。

年は海と同じで17歳。でも去年高校やめて、今はバイトしながら高認取るために勉強中って感じ。」





高校を辞めた?

しかも海先輩と同じ年。




ということは、

「海と博光が君に話した、濡れ衣着せられて高校中退した友達ってのがオレだよ。」





さらりと言ってのけた目の前の優男は、こんなに重大なことをなんてことの無いように話す。



高校を中退するに至った原因を考えれば、多少なりとも苛立ちや憎悪の感情があってもおかしくないのに、全くこの人の目に感情の揺れは見られない。




「はい、じゃあ次はくるみちゃんの番ね。自己紹介どうぞ。」




にっこり笑顔だが、なんとも裏の読めない顏だ。


ニコニコしていれば大抵の相手は気を許すというのは今までの経験上わかっている。


そのため相手にそれをされてしまうといつも以上に警戒してしまう。




ニコニコしてるってことは、相手を油断させたいってことだからな。




「牧村くるみです。

好きなものはおいしい牛乳とおせんべいです。

海先輩に巻き込まれまくりの可愛そうな後輩です。」




「ははっ それ海に言っちゃおーっと。」



「どうぞどうぞ。いつもあたしが自分で伝えているので意味はないと思いますがね。」




ケラケラと楽しそうに笑う篠宮さん。




「で、そんな自称篠宮さんは、なんの用事であたしに話かけてきたんすか?

ちなみに、あたしは篠宮さんとお会いするのは初めてなもので、あなたが本物の篠宮さんだとは思っていませんけど、それでもお話ししますか?」




ニコリと笑顔を返しながらそんなことを言うあたしを見て、初めて感情の揺れが目に現れた。




…やっぱり海先輩に関係する人と関わるとろくなことがないなぁ。








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