それいけヒーロー部
その後、あたしたち3人と相手も3人ということで、自然と一対一での戦いになり、あっさり勝負はついた。
あたしと戦おうとする人がいなくて切なかったのは内緒だ。
「もう大丈夫ですよ。時間かかっちゃってすみません。」
加害者への対応は銀次郎と陣野くんに任せて、ずっとあたしに言われた通りに戦いから目を背けて耳をふさいでいた被害者の1年生に声をかけると、大げさにびくっと肩をはねさせた。
正面に回って顔を上げるように言うと、つぶっていた目を開けた。
「怪我の具合はどうですか?」
「あ、あの!ありがとうございます!!」
怪我の具合を聞きたいんですけどあたしは。
「どういたしまして。で、怪我は?」
「お礼、がしたいので、お、お名前を!」
…なんだこの人?
さっきまでのおびえていた様子は鳴りを潜め、なんだか挙動不審だ。
「怪我がないならいいですけど、あるならちゃんと治療してくださいね。」
それだけ言って銀次郎と陣野くんのもとへと近寄る。
あの被害者、話が通じない。
「こっちの様子は?」
「ここでタバコ吸ってたらあの子に見つかって注意されて、イラッとしたんだってさ。」
「ふーん。で、口止めのほうは?」
「また見つけたら金的の刑に処す。カシューが。」
「あたしがかよ。ま、別にいいですけど。
じゃ、そういうことで、これを機にタバコは止めたらいいですよ。蹴とばされたいなら別ですけど。」
その言葉に2年生グループは全力で首を横に振った。
「あと、このことは他言無用ですからね。言ったらあなたたちがしたことも明るみに出ると思ってください。」
こう言った類の口止めは、一言で言ってしまえば脅しである。
力には力を。
この制裁のやり方はそういうものだ。
このやり方を変えるための会議を今の海先輩と葛西先輩が生徒会のみんなとしてくれているはず。
「被害者の方は?」
「なんか話通じないから放置した。ハッピー、あっちも口止めよろしく。」