それいけヒーロー部
「君はくるみちゃんだよね。」
野間沢があたしの顔を覗き込んでそんなことを聞いてきた。
金色の髪に大きな瞳、少し長めの前髪は右に流して黒いピン止めでとめてある。
人見知りというものをしないのか、大きな瞳はあたしの顔からそらされることはない。
「あれ?知らんぷり?」
こてんと首を傾けてこちらを見る野間沢くん。
きゅるるんと音がした気がした。
…あぁ、この感じ、どこかで感じたことがあると思ったら、お母さんの実家で飼っているゴールデンレトリバーの銀次郎と同じなんだ。
「牧村くるみです。はじめまして。」
はじめましてじゃないのにーとむくれる銀次郎。
あ、間違えた野間沢くん。
「あの、今あたしは何のためにどこに向かっているんですかね。」
「行けばわかるよ。あと、敬語じゃないくていいよ?タメなんだし。」
陣野くんが柔らかく笑った。
向こうがゴールデンレトリバーならばこっちはシベリアンハスキーだろうか。
きりっとした瞳にスッと通った鼻筋。
髪の色は黒いけれど、ところどころに銀色のメッシュが入っている。
奇抜な髪型だなあ。
銀次郎よりは話が通じそうだ。
あ、野間沢くんだった。
「ついたよ。」
ついた先にあったのは…
「華道部の部室…?」
「またの名を本部。どうぞ、先輩がお待ちかねだよ。」
陣野くんがドアを開けて、スマートにエスコートしてくれるんだけど、え、今なんて言った?
本部?先輩?
「ようこそ、牧村くるみちゃん。」