それいけヒーロー部


その3日後。




不可能を可能にしてやったよあたしは。



「ちょっとお兄さんたちとお話ししない?」


「な、んなんですか…?」




昼休みに飲み物を買いに体育館の近くにある自販機までやってきたら、どこかで見たことのある軽そうな顔の二人組に捕まった。


片方は短い黒髪をつんつんと立たせていて、もう片方はツーブロックというやつだ。



前に同じような髪形の人を刈り上げって呼んだらこれはツーブロックだと怒られたから覚えている。


そんな二人を無視して教室に戻ろうとしたら腕をつかまれ、これは被害者になるチャンス到来じゃないかとようやく気付いた。




ちなみになんでこんな学校のはずれにある、人気のない自販機までわざわざ来たのかというと、ここにしかないパックのバナナ牛乳がどうしても飲みたかったからである。




「君ってさ、最近生徒会の沼田と仲いい子でしょ?」



「…別に仲よくなんてないですけど?」




こんな人たちにまで知られているとは。

刈り上げの方がニヤニヤと言葉を続ける。



「またまたぁ。最近沼田が1年の女子に手を出してるって有名な話だよ?

で、その子は1年のイケメン江橋の隣にいつもいる子。それって君でしょ?」





マリリンも有名人なんだなあ。

それに付随してあたしまで顔が知られているとは。


先輩たちや陣野くんが言っていたことはあながち間違いじゃなかったってことだ。




「君、顔は結構可愛い、というか愛嬌のある顔?してるけど、有名人二人もひっかけるなんて、そんなにイイの?」



え、今のって褒められたんですかね?


愛嬌のある顔って言われた!

結構可愛いって言われた!

けどなんか下品な顔で下品なこと言われた気がする!




本当ならここで何言ってんだ気持ち悪いとでも言ってぶん殴りたいところだが、今のあたしはか弱い可愛い女子高生だから。



か弱い女子高生はぶん殴らないし口も悪くない。





「何を言っているのか理解しかねるのですが、教室に戻ってもよろしいでしょうか?」




……か弱い可愛い女子高生って、どんな話し方するんだろう…。






< 166 / 344 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop