それいけヒーロー部
あたしの言葉に生徒会室にいる全員の視線がこちらを向いた気がした。
「どういうことだ?」
「えっとー、夏休みだったかな?
詳しい日時とかは全然覚えてないんですけど、前にこの人コンビニでお菓子万引きしようとしてたんです。
で、ちょうどそれを見かけちゃったもんですから、注意したんです。ダメですよって。
そのお菓子、あたしも食べたいやつだったんで、それを買って帰りました。私服だったんで同じ学校の先輩だとは思いませんでした。びっくり。」
その時期の限定のお菓子で、先輩が万引きしようとしてたのが最後の一個だったんだよ。
だから注意した代として、奪って買って帰ったのだ。
そうか、この先輩あれに懲りずにまた万引きしようとしてかっちゃん先輩に見つかったのか。
馬鹿だなあ。
「須藤。今の話は本当か?」
風紀委員長が万引き先輩に聞くと、先ほどかっちゃん先輩に怒鳴っていた人物と同一人物とは思えないような顔で先輩は首を振った。
横に。
…残念だ。
きっとこの人は万引きを常習的にしているんだろう。
悪いことをしているという感覚はないのだろうか。
…ないんだろうな。
あったら最初から万引きなんてしないと思うから。
「本当のことを言え。」
委員長の問いかけにただただ首を振るだけの先輩。
その顔面は蒼白という言葉がぴったりくる。
「……この件は一度風紀でしっかり話をつけてからまた来る。
仕事の邪魔をしてすまなかった。それと、戸田も、嫌な思いをさせてしまってすまない。
後日話を整理してちゃんと謝罪しに行く。」
風紀委員長が万引きの先輩を連れて生徒会室を出ていった。