それいけヒーロー部
あたしの正面に立ち、うつむいたまま話始める万引き先輩。
真面目そうな顔をしているが、その実万引きの常習犯なのだから世の中見た目じゃないんだなと改めて感じさせてくれるわ。
「何がですか?
あたしのせいって、いったい何の話です?」
痛むお腹をかばいながら先輩の前に立つ。
このくらいの痛みなら、海先輩と昔本気で喧嘩したときに殴られた痛みと比べればなんてことはない。
あの時の海先輩は本当に怖かった。
狂ったように喧嘩する海先輩とかただの恐怖でしかない。
「お、お前…!お前が余計なことを言わなければ、オレは!!」
「あたしが余計なことを言わなかったら、きっと先輩は普通の顔をして大学に行って、
また同じことを繰り返して、お巡りさんの厄介になって新聞に名前が載るところでしたね。」
「…違う!オレはそんな…」
「先輩、今まで何回万引きしたんです?
2回も目撃されて、上手とは言えないみたいですけど。」
「違う、違う違う!オレはただ、」
「なんの理由があろうと、万引きが犯罪である事実は変わりませんよ。
そして、先輩がどんなに頑張っても万引きをした過去は消えません。」
「でも、お前が余計なことを言わなければ、こんな思いをすることはなかった!」
「こんな思い?どんな思いですか?」
「人目にさらされ、後ろ指さされて…きっとオレはこれからずっとみじめな思いをすることになる!」
「……は?」