それいけヒーロー部

「……憂さ晴らし。」


「うわぁ、最低。」




想像通りすぎて逆に感動するわ。



「何に対する憂さですか?」


「学校とか、親とか。」



「すごい。典型的なダメ反抗期ですね。」



「学校では真面目な顔をしなきゃいけないし、家でも優等生で通ってるからちゃんとしていなきゃいけない。」



「それって最高に疲れますね。」



「でも、周りはオレのことをそういう目で見てる。真面目な優等生って。

だからその通りでいないといけないと思った。」





周りの期待ね。

最初のキャラ付けに失敗するとそうなるんだよなー。



あたしなんかは適当なふざけ具合だから誰も無駄な期待なんかしないし、逆に少しちゃんとしたことすると褒められるからね。

失礼なことに、みんなあたしのこと小学生だと思ってるから。



「まぁでも、その優等生のキャラで頑張ろうと思ったのは先輩でしょ?

確かに周りからの過度な期待はしんどいかもしれないけど、それを選んだのは先輩だよ。

今更それをストレスに感じたからって言って、人のせいにはできないと思うな。」



「…お前は、自分の好きに気楽に過ごしているからそんなことを簡単に言えるんだ。」



「そうかもしれないけど、先輩は好きに選んでいいよっていう選択の時に自分で選択したんでしょ?」



「小さいころから親はオレにいい子でいることを強要した。」



「嫌だとは言わなかったんです?」



「言えない、というかそれしか知らなかったから、他の選択肢がなかった。」



「高校生になった先輩なら言えたんじゃないんすか?

周りを見て、他の選択肢があることはわかっていたでしょう?」



「そのころにはもうこれが当たり前だったから。言う気にもならなかった。」




「ほら、そこは先輩の選択ミスだ。何かしら抗うことはできたのに、それをしなかった。

…いや、抗った結果、先輩は万引きに手を染めた。」



「……そうだ。」



「楽しかったですか?万引き?」



「悪いことをしているという感覚が、楽しかったんだろうな。

親の知らないところで罪を犯して、親に反抗しているような謎の感覚があった。」



「馬鹿ですか?」



「本当に、馬鹿だよな。」



「万引きなんてダサいことしなくても、親に反抗する手立てなんていっぱいあるのに。

なんでそこで法を犯すかな。」





< 239 / 344 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop