それいけヒーロー部

「マヒしていたんだと思う。

でも、戸田に見つかったときは、どうしようという気持ちでいっぱいになった。」




知り合いに見られて動揺したこと、止められたのに罪を擦り付けてしまったこと、親に知られたらという不安。




「それ以来は、もうやっていない。」


「当たり前です。これでまだ続けてるとか言ったらぶっ飛ばしますよ。」



そう言うと、先輩は小さく、力なく笑った。



「今回、親にもオレがやっていたことを知られた。」


「それはそうでしょうね。」



「親に言われたよ。『お前がそんなことをするはずがない、何かの間違いだ』って。

先生もさ、『戸田たちに脅されているんだろ』って言った。


それを聞いて、オレがしてきた優等生は本当に上辺だけだったんだなって思った。

誰もオレの本心なんて気づきやしない。すげぇむなしくなった。」




親にも先生にも、誰にも信じられなかった。

自分で認めているのにも関わらず、見てもらえなかった。




「…なんで先輩が万引きに手を染めたのかは、わかりました。先輩の気持ちも。

でも、万引きはダメです。それは許しません。」



「わかってるよ。

お前にも当たって悪かったな。完全にオレの八つ当たりに巻き込んだ。すまなかった。」




「…もう万引きなんてしないでくださいね。もしまたしたら、本気でぶっ飛ばします。」




「あぁ、もう二度としない。お前に誓うよ。」




「ならいいです。

…あと、親さんには話をしたほうがいいと思います。先輩の気持ちとかいろいろ。」



「…そうだな。」



「もし、また信じてもらえなかったり、うまくいかなかったりしたら、あたしでよければ話聞きますよ。

まぁ、ろくな相槌も打てないと思いますけど、それでも良ければ。」




「……ありがとう。助かる。」







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