それいけヒーロー部
「で、何されたの?」
「そんな大したことじゃないっすよ。」
あれはただの身体接触の一つに過ぎない。
握手となんら大差ないのだ。
それがただ唇という今まで触られたことのない場所だったから驚いただけで、なんの気持ちのこもっていない接触にあたしはこれ以上動揺したりなんかしない。
「あ、沼田だ。」
あたしたちの会話を聞きながら仕事を始めていた会長が、窓の外を見ながらつぶやいた。
「ちょうど今、お前の教室に行っていたんじゃないか?あそこらへん、お前のクラスだろ。」
中庭を挟んで対面に位置している校舎の廊下。
確かにあそこらへんにはあたしのクラスがある。
その廊下を腹黒が歩いているのが見えた。
「ここから見えるもんなんですね。」
「ああ。たまに沼田が廊下を歩いているお前を見つけて喜んでるぞ。」
「……それは聞きたくなかったかなぁ。」
「なんで沼田、ダメなの?
結構いい男だし、いいやつだぞ?
まあ、たまに面倒くさいというか、意味わかんないときがあるけどな。」
「え、もしかして会長、あの腹黒の事、あたしにおススメしようとしてます?
やめてくださいよー。それに、あたしには愛しのマリリンがいますので!」
「あれー、もしかして正式にくっついちゃったの?」
「そんな感じです。」
「あちゃー、じゃあ沼田くんに勝ち目はないかー。」
「それなら流石の沼田も諦めるかなー。
というか、それならそうと沼田に言ってやんないと、あいつ、いつまでもお前のこと諦めつかないんじゃね?」
「そうだねー。ちゃんと一回振ってあげた方がいいのかも。」
…あたしかなりの頻度で腹黒副会長に対して諦めろって伝えてきたと思うんだけどな。
揺らがないとも言ったし。
「それもそうですね。一度思い切り振ります。」
それはもう疑いようのないくらい、完膚なきまで。