それいけヒーロー部

ドアをノックする音が廊下に響く。

もうみんな部活に出払ったのか、周りは驚くほど静かだ。

生徒会室も人の気配が感じられない。




「はい」


静かな廊下に静かな返事が聞こえた。


ドアを開けるといつもの席に風紀委員長が座っている他、誰もいなかった。



「失礼します。いいんちょ、お疲れ様です。」

「…牧村か。」


「お昼は忙しそうだったので、また来ちゃいました。」


「わ、悪かった。昼は、忙しくて。」


「いや、あたしも何も聞かずに特攻してきてしまったのが悪かったんです。すいませんでした。」




「……なんか、大人しいな。」



相変わらず視線を合わせようとはしないものの、声色と雰囲気で何かを感じ取ったのか、そんなことを言われてしまった。


「いいんちょ、牧村さんはいつだって大人しい女の子だったでしょうよ。」

「いや、それはない。」

「断言された。つらい。」



そりゃ、風紀に来るときはことさらアホなくるみちゃんキャラで来てましたからね。

大人しいところ見せたことないわ。

こんなテンションで来たら不審がられるのなんて明らかなのに、何を考えてあたしはここに来てしまったんだ。ボロをだす予感しかしない。


今日風紀について何か聞き出すのは無理だな。



「…何かあったのか?」


「うーん、そうですね。何かあったのかもしれないし、なかったのかもしれない。あたしは自分の事を理解するのに時間がかかる質なのです。」


「…なんの話だ?」


「こっちの話です。気にしないでください。」


「そんなこと言われても…」



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