それいけヒーロー部
別に手足を縛られるなどの拘束はされていないため、大きな怪我をしない程度に躱しながら様子を見ていると、ようやく相手の一人が後ろから羽交い絞めにしてきた。
拘束した方が当てやすいということにやっと気が付いたらしい。
もがいて羽交い絞めから逃れようとするふりをして、正面にいるお兄さんを蹴り飛ばした。
「あ、すみません。」
正面にいたお兄さんは声にならない声を上げて地面に丸まった。
海先輩が言っていたが、鳩尾は交換神経が集まってて痛覚が鋭いらしい。
あと、一瞬呼吸困難にもなるんだって。
今は緊急事態だから人体の急所を突くのも許してほしい。
「ちょっと!大丈夫?!」
蹲って動かないお兄さんにお姉さんたちが寄っていく。
「すみません、鳩尾に当たってしまったのでしばらく苦しいと思います。」
「あんた、なに暢気に話してんの?!」
「蹴り飛ばすなんて最低!」
えぇー…一人の女子生徒を密室て囲んでリンチしてる人に言われたくない。
「えっと、そう思うなら、これ、やめさせてくれませんか?あたしもそれなりに痛いんです。」
「うるさい!もうあんたたち弱すぎない?!手加減してんの?!」
「してねぇよ!こいつが異様に頑丈なんだよ!」
「は?女子一人ボコボコにできないとか、あんたたちの腕力がなさすぎるだけじゃないの?」
急にお兄さん対お姉さんの舌戦が始まったと思ったら、外につながる唯一のドアがガチャリと開いた。
あまりにもあっけなく、静かにドアが開いたものだから少しぽかんとしてしまう。
ようやくお助けマンが来てくれたらしい。