それいけヒーロー部
「牧村さん、ちょっといいかな?」
昼休みに入ってすぐマリリンとご飯を買いに人があふれかえる購買に行くと、そんな声に呼び止められた。
「あれ?なんの用事ですか…沼田先輩?」
「これ、君の自転車のカギじゃない?」
「あー、本当だ。落ちてました?」
「うん、今朝拾ってもらった書類に挟まっていたんだ。だから牧村さんのだろうと思って。」
「正解です!ありがとうございます。…全然気ガ付カナカッタナー。」
「ふふ …喜んでもらえたようでよかった。じゃあオレはこれで。」
「はい。もちろんですよー。ありがとうございましたー」
それだけの短い会話をずっと横で聞いていたマリリン。
ずっとあたしではなく沼田先輩を観察していたような気がする。
マリリンはとっても鋭い男だからな。
「飯。どこ行く?」
「あー中庭!行こっか。」
「声がでかい馬鹿。」
「だってご飯だもの!テンション上げていかなきゃねー」
今日の夜は何を食べようかなんてのんきに話しているが、きっとマリリンの頭の中は沼田先輩とあたしのやり取りが原因でぐるぐる回っていることだろう。
あれ、なんかそんな言い方するとすごい自意識過剰な人みたいで恥ずかしいな。
マリリンが全くそんなこと考えてなくて本当に夜ご飯何にしようってしか考えてなかったらすごくあたし痛い子。
「副会長と、どんな話したの?朝。」
「マリリンさすが!あたしが痛い子にならなくてすんだよ!」
「…何の話だよオイ。」
「マリリンの頭の中はあたしのことでいっぱいってことですよね。」
「意味わかんねえ。」
「…心配かい?」
「心配だわな。」
「ふふ ありがと!マリリン愛してる!」
「はいはい。で、副会長どんな話したんだよ?誤魔化しとか効かねえからな。」
「誤魔化さないよ。マリリン相手に誤魔化そうだなんて、あたしには無理な話でしょ?」
「やっぱなんかあったんだな。」
「まぁ、それなりにな。」
やっぱあたしの技量でマリリンのこと欺くとか無理よね。
最初から欺くつもりもないけど。