それいけヒーロー部
以前連れてこられた生徒会室には誰もいなかったが、今は活動時間の真っただ中のようで、デスクが一つを除いて全て人で埋まっていた。
各々書類を書いたり読んだり、パソコンを操作したりと作業をしていたようだが、ドアが開いたことで視線がこちらに向けられた。
「みんな、雑用要員連れてきたよー。」
部屋の中には全部で4人。
一番奥に座っているのが会長だな。
「おう、時間かかったな。」
「くるみちゃんがパッと動いてくれなかったからさ。」
「あたしのせいにしないでくださいよ。事情も説明せずに引きずってきたくせに。」
「まぁまぁ、とりあえずくるみちゃん、自己紹介しよっか。」
ものすごく嫌な顔をしてじとーっと睨むが、何とも思っていない様子の沼田先輩に背中を押され一歩前に出される。
「あーっと…1年1組31番牧村くるみです。
好きな飲み物はおいしい牛乳、好きなお菓子はせんべいです。どうぞよろしく。」
そんな気の抜けた自己紹介に、ぱちぱちと拍手が返ってくると逆に申し訳なくなってくる。
「君が沼田一押しの牧村か。こんなところに急に連れてこられて災難だったな。
オレは生徒会長の羽島だ。よろしくな。」
真っ黒な黒髪に、こげ茶色の瞳、少したれ目がちな甘い顔をしている会長。
この人は見た覚えがある。
生徒会長になった暁には購買に肉まん、あんまん、ピザまんその他数種の中華まんを常備するよう校長に掛け合ってくれると約束してくれた、中華まん大好き人間だ。
あたしはピザまんが大好きなので、ぜひとも実現していただきたいと思ったことがあり、この人の顔はちゃんと覚えていたのだ。
「羽島会長、ピザまんの件はどうなりましたか。」
「今校長に掛け合っているが、なかなか了承を得られないんだ…」
「そうなんですか…頑張ってください。応援してます。」
「オレのことは覚えてなかったのに、羽島のことは覚えてるのか。妬けるね。」
「まぁ、ピザまん好きなんで。」
それがなかったらたぶん覚えてないっすよ。