おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
即座に否定すると、香苗が肩をすくめる。



「あっそ。まあ、真子がそう言うならそうなんでしょうね」



とはいえ、私のなかでも、なにかがひっかかっている。


トラが女たらしだとは思えないし、五十鈴さんがいるのに浮気をするような人間のはずがない。



でも、だとしたら、おかしいことがいくつもある。


そもそも、なんでトラは私とルームシェアなんかする気になったんだろう………。




私のそんな疑念は、けっきょく解消されることのないまま、私の頭から吹き飛んでしまった。


なぜなら―――。



「あ、私、ちょっと見たいワイドショーあるんだよね。テレビつけていい?」



香苗がそう言って、テレビのリモコンの電源ボタンを押した瞬間。




「…………えっ? トラ!?」




お昼の情報番組で、テレビの画面いっぱいに映し出されたのが、トラの顔だったからだ。



しかも。




『最大手不動産会社の次期社長は

イケメンすぎる御曹司!!』




こんな字幕と共に。




「え、なに? どういうこと?」



驚いたように香苗が顔をあげて、説明を求めてきたけど。


私は中腰の状態のままぴくりとも動けずに、あんぐりと大口を開けたまま、呆然とテレビ画面を見ていることしかできなかった。




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