おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―







「おはようごさいまーす」


出社すると、すでに数人の社員がデスクに座っていた。

もちろん、その中にはトラもいる。


私はいつも乗り換えの駅でテイクアウトのコーヒーを買うことにしていて、トラよりも一本遅い電車で到着するのだ。


「おはよう、宇佐美さん」


椅子に腰かけると、隣の席の赤木さんが声をかけてくれた。

入社10年目のベテラン事務員だ。


「おはようございます。今日は忙しくなりそうですね」

「ほんと。がんばろうね」

「はい」


私は入社以来ずっと、赤木さんとペアで会計処理を担当している。

月末になると、みんなが焦って一斉に、溜め込んでいた伝票類をまとめて提出してくるから、事務方は一気に忙しくなるのだ。


処理が必要な書類が出たらその都度提出してくれと赤木さんがアナウンスしているんだけど、みんなも忙しくて、切羽詰まらないとなかなか出してくれない。


ちなみにトラは、そんな中で、事務方の苦労を思いやって早め早めに書類を提出してくれる、貴重な人材だ。

細かいところまでそつなく気づかいを忘れない、出来た男なのだ。




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