おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
A区内に本社ビルがあって、二階から四階までに人事部や広告部や総務部が入っていて、

一階には、家探しや土地探しをするお客さんが来店する営業所がある。


私とトラが働いているのは、この本社だ。


それと、隣のK市にも営業所がある。


ちなみに、この『ラララ不動産』という少し間抜けな会社名は、社長が直々につけたものらしい。

『思わずラララ♪と歌い出したくなるような素敵な出会いをお手伝いします』

というのが会社のキャッチコピーである。


それはいいんだけど、就職したてのころは、電話口で『お電話ありがとうございます、ラララ不動産です』と言うのがけっこう恥ずかしかった。

友達や親戚に就職先を訊かれたときに答えるのも、かなり恥ずかしかった。


でも、さすがにもう慣れたけど。


それに、この会社はなかなか居心地がよくて、私は気に入っているのだ。


人間関係もそれほど面倒なことはないし、仕事は時期によっては忙しいけど耐えられないほどではないし。


なにより、理想の土地や家や部屋を見つけて喜ぶお客さんの笑顔を見ると、いい仕事だな、と思ったりもする。

一生ものの大きな買い物だし、それを探すお手伝いというのは、責任も大きいけどやり甲斐も大きいのだ。


まあ、私は営業じゃないから直接的に土地や家を紹介するわけではないけど。

でも、営業さんが紹介に使う書類を作るのは私の仕事だ。


サポートしていることの成果が近くで見えるので、やっぱり、すごくやり甲斐を感じる。



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