おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
私たちが最近はまっている深夜枠のドラマが放送される時間だった。


キャストはマニアックだし原作小説もマイナーだし、あまり話題にはなっていないようだけど、

私とトラは、「これはなかなかの名作ドラマだ」と気に入っている。


私たちは、恋愛対象としてはお互いに好みのタイプではないけど、本や映画や料理についての意見は合致することが多いのだ。


「酒でも飲みながら見るかー」


トラが呟いたので、私は「いいね!」と同意した。

立ち上がって冷蔵庫から缶ビールを二本もってくると、トラは笑って「センキューベリマッチ」とふざけた。

私も「ノープロブレム」と返す。


トラの隣に腰をおろして、プルを開けた。


「かんぱーい♪」

「おう、今日も一日、ごくろうさん」

「トラもねー」

「どうもどうも」

「あー、やっぱこの俳優さん、かっこいいなあ」


私は頬杖をついてテレビのディスプレイを眺める。

トラが私の視線を追ってにやにやと笑った。


「お前、ほんとこういう男、好きだよな」

「やっぱりさあ、ミステリアスっていうの? なに考えてるか分からない人って、気になっちゃうもん。そういう謎な男が自分にだけは他の人に見せない顔見せてくれるとか、最高じゃん」

「ふうん、そういうもんかねえ」


トラは肩をすくめてビールをあおった。



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