おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
つまり、日比野悟という男は、それくらい皆からの注目を集めているということ。



うちの会社の花形といえる営業部で、常に契約件数トップという成績を独占しているエース。



印象的な大きな瞳に、すっきりと整った顔立ち、清潔感のある佇まい、すらりとした長身の体型。


これでもかというくらい恵まれた容姿。



そして、そういうハイスペックぶりを全く鼻にかけない、気さくで朗らかな性格。



人気が出ないわけがない。



「あーあ、日比野くんとちゃんとしゃべってみたいな」



吉岡さんが独り言のように呟いた。


私や吉岡さんみたいな、どちらかというと地味で平凡なキャラにとっては、日比野悟はあまりにも遠い存在だった。



同期入社だけど、ほとんど会話らしい会話などしたことがない。


新人研修では違うグループだったし、配属先も違う部署。


親しくなるきっかけなんか、あるはずもない。



―――と、思っていたんだけど。




「じゃあ、そろそろ時間なので、お開きで」



幹事の山田くんが声をあげると、参加者たちがざわざわと動き出した。




< 4 / 190 >

この作品をシェア

pagetop