おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
それはさておき、ね。


ほら、分かったでしょう?

私のタイプって、とにかくトラとは正反対なのだ。


トラは目に見えて優しいし、いつも穏やかに微笑んでいるし、どんなときでも周りに対する気づかいを忘れない。

顔はめちゃくちゃかっこいいし、髪型も服装も爽やかで清潔感があるし。

こちらに気をつかわせない程度に適度に喋りかけてくるし、沈黙が欲しいなと思ったときには、口をつぐんでくれる。

ほんと、空気が読めるやつなのだ。


基本的には感情が顔に出やすいから、何を考えているのかすぐに分かるし。


というわけで、ミステリアスさとか、謎な雰囲気とかは持ち合わせていない。

つまり、私のタイプとは全然ちがうのだ。


友達としてはすっごく居心地がいいし、気も使わないですむから、ルームメイトとしては最高だ。


むしろ、少しでも好みの男だったら、気恥ずかしくて一緒に住んだりできたもんじゃない。



「あー、ほんと、路頭に迷ったところを拾ってくれたのがトラで、運がよかったなあ」


思わずしみじみと呟くと、トラは目を丸くして「なんだよ? 急に」と首をかしげた。


「ん? なんでもなーい。気にしないで」

「ふうん?」


トラは怪訝そうに言ってから、すぐにテレビのほうに向き直った。


こちらが聞かれたくないことは聞かない。

トラは本当によく出来たやつだ。



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