おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
店を出て、階下に向かうエレベーターを待っていると。



「宇佐美さん」



突然、金曜の夜の居酒屋にいるとは思えない爽やかな声が、私の名前を呼んだ。



私はぱっと後ろを振り返る。



隣に立っていた吉岡さんは、私の100倍くらい驚いた顔で振り向いた。



そこに立っていたのは―――日比野 悟。



「あ、日比野くん。どうしたの?」



私はにっこりと笑って訊ねる。


日比野悟もにっこりと極上の笑みを浮かべた。



「あの、さ………宇佐美さん、二次会、行く?」



控え目に訊ねられて、私は少し目を見張ってから、



「ううん、このまま帰るつもりだけど。

明日、予定があって朝早いから」



と答えた。



「そっか。ならいいんだ。じゃ、またね」



日比野悟はこくりとうなずいて、片手をあげてみんなの輪に戻っていった。



「…………ちょっ、ちょっとなになに!?

どういうこと!?

なんで日比野くんが宇佐美さんに声かけてきたの!?」



吉岡さんが興奮した様子で問い詰めてくるので、私は眉をひそめて「うーん」と首を傾げる。



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