おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「うさ、お前、なんでも顔に出しすぎ」



トラは小さく笑って、すっと伸ばしてきた指の先で私の額を軽く弾いた。


突然のデコピンにも驚いたけど、それよりもトラの発言に引っ掛かった。



「うっそ! 私って、思ってること顔に出てる!?」


「おう、めちゃくちゃ分かりやすいぞ」


「えー………そうなんだ」



なんてこと、と私は驚愕を隠せない。


私、自分では変わったつもりだったけど、やっぱり昔のま まってこと?



「ま、いいじゃん。よく言えば裏表がなくて素直ってことだよ」



ショックを受けている私を慰めるように、トラがそんか嬉しいことを言ってくれた。



「うー………ありがと。トラってほんといいやつ!」


「そりゃどうも。まあ、あくまでも『良く言えば』だけどな。ムカついてるからって、ムカついてるのいちいち顔に出してたら、社会じゃ上手くやってけないけどな」



トラはからかうような口調で言った。


私は恨めしげな目つきで見つめ返す。



「なによー、アメとムチ作戦ですか?」


「心配してやってんだよ。うさが人間関係でもめたりしたらつまんないしな」


「そりゃね、私だってもめたくないけどさ」


「………でも、まあ、嘘つけないのがうさの良さでもあるし、そのままでいてほしい気もするけど」



―――やっぱり、アメとムチ作戦だな?


私はなんとなく気恥ずかしくなって、両頬を押さえた。




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