おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
うーん、我ながらスマートな仕事ぶり。
トラとの連携は本当にスムーズにいく。
やっぱり一緒に生活してるからかな。
コーヒーを淹れてカウンターに戻ると、トラはさっそくいくつかの物件情報をお客さんに見せているところだった。
トラはたぶん、うちで扱ってる土地や建物の情報を、ほぼ全て頭に入れているんだと思う。
だから、お客さんが探している物件の条件を聞くと、壁一面を埋め尽くす大量の情報ファイルの中から、一分もしないうちにお客さんのニーズに合ったものをさくさくと揃えてしまうのだ。
その鮮やかな手際は、見ているこっちが清々しい気分になるくらいだ。
「ご希望の地域の中で、先程の条件に一番近いのはこちらの物件だと思うんですが、いかがでしょうか?」
「あら、なかなか良さそうね。これってどの辺りになるのかしら?」
こういう質問をされると、たいていの営業マンは「ええとですね………」と、地図とにらめっこを始める。
でも、トラは全ての物件の住所を把握している上に、普段から休日を利用して付近の探索を欠かさずにやっているので、いつだって即答だ。