おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「え?」


意味が分からず首を傾げていると、トラがいきなり三歩ほど後退した。


「トラ? どうしたの?」

「いやー、うさのそういう格好、なかなかレアだからさ」


トラがにやっと笑って、私の着ているコーラルピンクのワンピースを指差した。

肩には白いレースのボレロをはおっている。


「べつに………普通のパーティードレスだし」


なんとなく気恥ずかしくて、私はぼそぼそと答えた。


「ふうん………なるほどな」


トラは腕を組んで小さく頷く。


「なによ」

「うん」

「どうせあれでしょ? 着られてるとか、衣装負けしてるとか言うんでしょ」

「いや、似合ってるよ」


あまりにもさらりと言われたので、私は一瞬、動きを止めてしまった。


「………なっ、なに言ってんのよ! もう、からかわないでよね」


慌てて笑ってごまかそうとしたけど、トラは平然とした顔だ。


「べつにからかってねえよ、思った通りに言っただけ」


私はまた俯いて、「……あっそ」と呟いた。

顔が赤くなっていないか不安だった。


「髪もいい感じだな。よく似合ってる」


―――もう言わないで。

ごまかしきれなくなったら、どうしてくれるのよ。


「まあ、うさはふだんの格好のほうが、うさ、って感じでいいけど」

「………そう」



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