クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
でも、息をずっと潜めながら耳をそばだててる自分がいた。

身体は二十四時間緊張しっ放し。呼吸をするのも気を遣って、精神的にかなり疲れていた。

「……疲れた」

コミュニティースペースで私はぽつりと呟く。

弱音なんて吐いていられない。しっかり仕事覚えなきゃ。

雑誌の入れ替えをしている手を止め、パンッと自分の頬を叩いて活を入れる。

今日はノー残業デーで佐藤さんの送別会。疲れた顔なんてしちゃいけない。

私の歓迎会でもあることは、ほとんど頭になかった。

幹事の織田君にこっそり何かお手伝いすることがあるか聞いてみたけど、『全て手配済みなんで大丈夫ですよ』と笑顔で断られた。

……確かに、新参者の私が出来る事ってあまりないもんね。

「……駄目だ」

何を考えても……マイナス思考。

「池野さん、大丈夫?それに、さっきパンッって音したけど……」

シンクで洗い物をしていた佐藤さんが手を止め、心配そうに私に声をかけた。
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