クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
私は朝比奈さんから視線を外すと、深く頭を下げた。

「……池野陽世莉です。宜しくお願いします 」

大丈夫。高校の卒業式に告白してきた女の事なんて多分覚えていない。私はあの時名前も名乗らなかったし、今はコンタクトで外見がちょっと変わってる。

動揺するな、陽世莉。

私は自分に必死に言い聞かせる。

十数秒頭を下げたままでいると、真田さんのクスクスっという笑い声が聞こえた。

「池野さん、そんな緊張しなくていいよ。男が多い職場だけど、みんな気さくでいい奴だから」

……でも、過去に振られた相手が目の前にいたら、凄く気まずいじゃないですか?

心の中でそう反論して恐る恐る顔を上げると、漆黒の双眸が訝しげにじっと私を見ていた。

うわっ、駄目!これ以上正視出来ない。

私は朝比奈先輩と目が合うとすぐに視線を外し、彼のネクタイをじっと見つめる。
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