クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
すき焼き店でも吐いたのか、嘔吐物はあまりなく胃液だけ吐いてただ苦しそうにひよこは顔を歪めた。

ひよこの吐き気が収まると、俺はキッチンに行って冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、バスルームに移動してタオルと洗面器を手に取るとひよこの元に戻った。

「ほら、水飲んで口の中をゆすぐといい」

ペットボトルの蓋を外してひよこに飲ませる。辛くて俺に逆らう体力もなかったひよこは、俺の言うことに素直に従った。

俺が洗面器を差し出すと、水を吐き出してぐったりした様子で苦しそうに息をする。

ペットボトルと洗面器を脇に置くと、俺はひよこの身体を抱き上げた。

彼女も歩こうと思えば歩けただろう。

だが、辛そうに歩くひよこの姿を見るのが嫌だった。

「苦しいよな」

ひよこの身体を労るように声をかけて彼女の寝室に向かう。

「あ……朝比奈……先輩……迷惑ばかり……かけて……すみません」

口を開くのもやっとという感じで、ひよこが俺の肩にもたれ掛かりながら謝罪する。
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