クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】

「ああ、復活したみたいだ」

「え？朝比奈さん、ペット飼ってるんですか？何のペット飼ってるんですか？」

好奇心旺盛の織田君が話に割って入る。

朝比奈先輩がなんて答えるのか不安で私は彼に目を向けた。

「織田、お前、今日はゼータ社と打合せだろ？資料はちゃんと出来てるのか？俺の手元にはまだ来てないぞ」

朝比奈先輩が冷ややかな目で織田君を睨む。

「あっ、すみません！あと二十分で完成させます」

織田君はペコッと頭を下げて朝比奈先輩に謝ると、パソコンに目を向け、無言で資料作成に取り掛かる。

「じゃあ、池野さん、今日は旅費精算やってみようか？」

佐藤さんが私に声をかけると彼女の側に椅子を近づけ、彼女の説明に耳を傾けた。

それから、いつものように定時まで仕事をこなして会社を出ると、私は歩いて銀座のダイヤの買い取り業者に向かった。

母の形見の指輪を売るためだ。指輪は一番上の引き出しに大事にしまっていたお陰であの水害があっても無事だった。