クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
「……いいえ」

ゆっくり横に首を振ると私はうつむいた。

言うなら今が絶好の機会だ。真田さんは事情を知ってるし、彼が一緒の時の方が言いやすい。

もうこれ以上朝比奈先輩に迷惑をかけたくない。

だから……今ここではっきり彼に言おう。

そう決意すると、朝比奈先輩を仰ぎ見た。

「私……今日朝比奈先輩の家を出ます。いろいろとご迷惑をおかけしてすみませんでした」

心から謝って頭を下げるが、朝比奈先輩の無機質な声が耳に届く。

「他に行く宛てが出来たのか?」

私は顔を上げて朝比奈先輩を見ると、彼の表情は何故か険しい。

何でそんな怖い顔してるの?厄介者がいなくなるんだから、普通……喜ぶはずでしょう?

「……引越しの資金が出来たので……」

ビクビクしながら答えるが、彼の質問はまだ続いた。
< 141 / 297 >

この作品をシェア

pagetop