クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
11、責任を取る ー 悠人side
次の日、会社で真田と打合せをしていると、こいつがペンをくるくる手元で回しながらニヤっとした顔で俺を見た。

「池野さん、今日は晴れやかな顔してるね。どうなるかと思ったけど安心したよ。朝比奈、どんな魔法を彼女にかけたの?」

ひよこの口から『母親の形見の指輪を売った』って聞いた時はヒヤッとしたが、無事に取り戻せて良かったと思う。

日が経っていたら、違う業者の手に渡って原型を留めていなかったかもしれない。

あのキスの後、ひよこを落ち着かせるために、近くのイタリアンの店で食事をした。

最初はかなり取り乱していたひよこだったが、俺が高校の卒業式の時の話に触れ事情を説明すると、誤解が解けたのか少しずつだが打ち解けてきた。

家族の話もするようになった。

五歳の時に母親が亡くなり、小学生の頃父親が再婚するも継母と義理の妹との仲はあまり良くなく、高校卒業後にひとり暮らしを始めてからは、実家に一度も帰っていないという。
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