クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
「まあ、確かにお互いを知る時間は必要じゃな」

このニヤついている目が怪しい。

多分、大人しくはしてはいないだろうな、このタヌキじじい。

俺は心の中で毒づいた。

「待ってください!だったら、私が今すぐ朝比奈先輩の家を出ていけば……」

じいさんの前で取り繕う余裕もないひよこは再度俺達の話に割って入る。

「どこにも行く宛もないのにか?馬鹿な事を言うな」

「でも……責任なんて取ってもらいたくありません!朝比奈先輩にこれ以上ご迷惑は……」

「くどいぞ。迷惑じゃないと何度も言ってる。お前が心配する事は何もない」

ひよこがいずれちゃんとひとりで歩けるようになれば、俺の元を離れていい。

だが、今はまだダメだ。ここでひよこに逃げられるわけにはいかない。そんな事は絶対にさせない。

ひよこの手をつかんで彼女を引き寄せると、俺は少し身を屈めて彼女の耳元で囁いた。

「大人しくしてないと、今この場でキスするぞ」
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