クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
意地悪く告げると、ひよこは狼狽えた。

「そ……そんなあ」

小声で抗議するも、俺の目を見て今の状況を覆すのは難しいと悟ったのかひよこは唇を噛み締め黙り込んだ。

「最近会ったにしては、かなり親密じゃな。やはり、同じ高校出身となると親近感を感じるか?これなら曾孫を抱ける日も近いのう」

俺達の様子をじっと見ていたじいさんが口元を綻ばす。

「用がそれだけなら戻りますよ。まだ仕事があるので」

これ以上じいさんの茶番に付き合ってはいられない。

「ああ。 陽世莉ちゃん、またな」

じいさんがにっこり笑ってひよこに手を振るのを冷ややかな目で見ると、俺は彼女の手を引いて会長室を後にする。

この時の俺は、ひよこを手放せなくなるなんて思ってなかった。

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