クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
すぐにおじいちゃんを棚に案内すると、次にわかりやすい現代語訳がないかと聞かれ、恩師の著書を紹介したら、おじいちゃんは『それは、わしの友人の本じゃ』と言ってにっこり微笑んだ。

私の恩師ー佐川厳は源氏物語研究の権威で、源氏物語の現代語訳以外にもたくさんの研究書を出していて、源氏物語の研究をしている人なら先生の名前は誰もが知っている。

年は確か七十だったと思う。厳格な人だけど、私には優しい先生だ。佐川先生のゼミに入れた私はラッキーだったと思う。

先生の研究室には図書館の展示室に置いてあるような貴重な本がたくさん置いてあって、私は毎日のように研究室に通った。先生もそんな私の事を孫のように可愛がってくれて、私の悩みをいつも親身に聞いてくれた。

その先生の友人と聞いて、私はおじいちゃんに親近感を感じた。

ニコニコ顔のおじいちゃんに佐川先生は自分の恩師だと伝えると、彼は「ほう、そうか。世間は狭いのう」と言ってハハッと声を上げて笑った。
< 160 / 297 >

この作品をシェア

pagetop