クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
「だったら男の人には近づかないようにします」

上目遣いに朝比奈先輩を見ると、彼は身を屈めて私の頬に手をやる。

「この状況でよく言えるな。婚約者殿」

「……この状況で悪ノリしないで下さい。心臓に悪いです。会長もいないのに」

「言うようになったな。だが、会長の目を誤魔化すにはお前がもっと俺に慣れる必要がある。俺を拒むな」

真摯な目でそう告げると、朝比奈先輩はその非の打ち所のない綺麗な顔を私に近づけて私の唇を奪った。

多分……私が拒めば彼はキスを止めたかもしれない。

でも、私は……朝比奈先輩に捕らわれ、目を閉じてキスを受け入れた。

甘くて、温かくて、優しいキスに……胸がきゅんとなる。

そう感じるのは、きっと彼のその美しい姿だけでなく、彼の心にも惹かれているせい。

高校の時は、朝比奈先輩の性格なんて知らなかった。自分が勝手に妄想して楽しんでただけ。
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