クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
痛みで顔をしかめながらも、コーヒーを置いてそのまま退出しようとすると、朝比奈先輩に手を捕まれた。

え?

びっくりして朝比奈先輩の顔を見ると、彼は澄まし顔で真田さんに指示を出す。

「真田、五十嵐に札幌の試験場の件、説明しといてくれ」

「了解」

真田さんが笑顔で頷くが、五十嵐さんが訝しげに私の方を見ていて私はいたたまれなくなってうつ向いた。

「行くぞ」

「……大丈夫ですから」

小声で言って、朝比奈先輩の手を外そうとするが、彼は離してくれない。

私の手を掴んだままミーティングルームを出てコミュニティースペースに向かうと、奥にあるシンクの蛇口をひねって私の左手を冷やす。

「あ、朝比奈先輩、指輪外さないと」
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