クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
十六時を過ぎると佐藤さんは産婦人科の健診のため、定時より早く帰宅した。

今日は後二時間で終る。

佐藤さんにもらったマニュアルに目を通していると、外出先から朝比奈先輩が戻って来た。すぐに自席に行くと思ったのに、彼はなぜか私の背後に立った。

何?何?私、何かやらかした?それとも、あの時告白した女だってバレた?

マニュアルをガン見しながらも、意識は背後にいる朝比奈先輩に集中している。

「名刺発注しといて。明日、佐藤さんが来てからでいいから」

私のデスクに一枚の名刺を朝比奈先輩がスッと置く。長くて綺麗なその指に見いってしまったけど、その時、微かにムスクの甘い香りがフワッと漂った。

うわぁ!

私は思わずぎゅっと目を閉じる。

その香りがなくなる頃には、彼はもう自席に着いていた。
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