クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
本人の意志を無視して、無理矢理襲うのは趣味じゃない。

ひよこが自分を欲しがるまでは、彼女を奪わない。

そう心に決めて理性で自分の衝動を抑えると、俺はひよこの額を軽く小突いた。

「大丈夫だ。何もしない。俺も眠い」

ひよこを安心させるようにわざとあくびをしながら言うと、俺は背後から彼女の身体を抱き抱えるように抱き締める。

「こ、これじゃあ、寝れません!」

硬直気味のひよこが小声で抗議するが、俺は彼女の身体を離さなかった。

「そのうち慣れる」

「朝比奈先輩、無理ですよ~。緊張して眠れません!」

「無理じゃない」

今は手を出さないが、これは譲れない。

心地よい温もり。彼女を抱いて安心する自分。

今朝まで帰って来なかったから余計にそう感じるのかもしれない。

だが、この温もりを知ってしまったら、もうひとりの生活には戻れない。
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