クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
それを見てズキンと胸が痛んだ。

二人の姿を正視出来なくて、私は背を向けてブースの裏に行きお酒を補充する。

やっぱりあの二人恋人同士なのかな。

ひとり落ち込んでいると、誰かがやって来て、私の背中にそっと触れた。

朝比奈先輩?

そう期待して振り向くと、織田君だった。

朝比奈先輩じゃなくて落胆する自分に嫌気がさす。

「パリに来てから五十嵐さん、ずっと朝比奈にくっついてるんだ。陽世莉ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫だよ」

私は咄嗟に作り笑いをする。

「本当に?動揺してない?朝比奈さんじゃあ、陽世莉ちゃんは幸せになれないんじゃないかな?」

織田君の言葉に私は笑ってしまった。

そもそも朝比奈先輩の偽の婚約者を演じてるだけだし……彼とは結婚なんてしない。

彼のように完璧な人には、……五十嵐さんの方がお似合いだ。
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