クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
氷のように冷たい彼の声に、織田君の身体がビクッとなる。

驚いて顔を上げ後ろを振り向くと、朝比奈先輩がいた。彼の背後には五十嵐さんもいて……胸が痛くなる。

朝比奈先輩が来てくれたのは良かったけど、婚約者の役はもういい……とか言われるのかな。

そう覚悟して朝比奈先輩の顔を見ると、彼は険しい表情でずかずかとやって来て、乱暴に私から織田君を引き剥がすと私を胸に抱き締め織田君と対峙した。

「朝比奈さん、僕は……納得してないです!陽世莉ちゃんが婚約者なんて……。だいたい朝比奈さんは陽世莉ちゃんの事、本当に好きなんですか!」

織田君が朝比奈先輩を睨み彼に食ってかかるが、そんな織田君とは対称的に朝比奈先輩は静かな声で答えた。

「好きだよ。だから、お前にはやれない」

……好き?

それは……私が婚約者役を演じてるからだろうか?

私が朝比奈先輩を見上げると、彼は私を抱き締める腕に力を込める。

「織田君、諦めなさい。私達の出る幕じゃないのよ。私も彼に振られてるの」
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