クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
後十分もすれば他の社員もやって来る。

時間潰しにコミュニティースペースのゴミ捨てや水回りの掃除をするが、昨日の朝比奈先輩とのキスを思い出してしまった。

昨日家に帰って、何度先輩とのキスを反芻したかわからない。

頭をブンブンと振って雑念を追い払おうとするが、無駄だった。

キスされた現場がここなのだから……。

……先輩の唇……柔らかかったな。

「じゃない‼あ~、朝からあの人に翻弄されてどうするのよ」

私は自分の頭をコツンと叩いた。

壁の時計を見れば、時刻は八時五十六分。

……そろそろ始業時間だし、戻ろう。

オフィスに戻ると、佐藤さんが席にいて私はホッと肩を撫で下ろす。

「池野さん、風邪引いたの?大丈夫?」

佐藤さんがマスク姿の私を見るなり、心配そうに声をかける。

そんな彼女の声が奥の席にいる朝比奈先輩にも聞こえたのか、彼はククッと肩を震わせ笑っていた。

……面白がってる。

私は朝比奈先輩の様子に顔をしかめた。
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