クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
「高校が東京なら実家も東京なんじゃないのか?」

朝比奈先輩があまり聞かれたくない話題に触れてくる。

「……自立したくなって高校卒業と同時に家を出たんです」

あの家には……自分の居場所はないから……。

私の母は私が幼稚園の頃、癌で亡くなった。それから、しばらく父の実家に預けられていたけど、小学二年の時に父が再婚。
相手の方にも私と同じ年の女の子がいて、父に呼び戻されて一緒に生活することになった。

でも、義理の母は私の事をよく思ってなくて……家にいるのが辛くて逃げ出した。父はいつも義理の母の肩を持っていたし……私の味方は誰もいなかった。

実家の事を考えて暗い気持ちになっていると、朝比奈先輩が私の前に紅茶の入ったカップを置いた。

甘いフルーツのいい香りがするフレーバーティー。

「いい匂い」

素直な感想をもらすと、朝比奈先輩は柔らかな笑みを浮かべた。

こんな笑顔初めて見た。いつもはどこか人を見下すような笑顔しか見せないのに……。
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