クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
「これは酷いな」

朝比奈先輩の言葉にも何の反応も出来なかった。

どれくらい呆然として立っていたのだろう?

私は屈んで目の前に転がっているパンプスを拾い上げた。

初めてのボーナスで買ったブランド物のパンプス。修理したりして大事に使っていたのに……。こんな泥まみれではもう使えない。

パンプスを脱がずに玄関を上がり、キッチンの引き出しに入れていたゴミ袋を出して泥まみれのパンプスをその中に入れると、床に落ちているものを全部ゴミ袋の中に放り込んだ。

冷蔵庫も洗濯機も泥だらけ、ベッドは水浸し……。今日、寝る場所もなくて悲しくなる。

どうやって片付けていいのか途方にくれた。

私の居場所が……。

くず折れそうになる私の腕を朝比奈先輩が掴んだ。

「ひよこ、病み上がりだろ?それに、これは業者にでも依頼しないと無理だ」
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