クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
「でも……」

私は悔しくて唇を噛み締める。

「貴重品と当座の着替えを持って一先ずここを出よう。今、不動産屋が来て話をしたが、もうここには住めない。敷金は全額……」
もうここには住めない?

朝比奈先輩の言葉はそれ以上頭に入って来なかった。

私の家がなくなちゃった。

ははっと乾いた笑いが出てくる。

引越しをして、家電を買い直すなんて余裕、今の私にはない。

ホームレスになれって言うの?

「ひよこ、荷物をつめてうちに帰るぞ」

朝比奈先輩がクローゼットを開けて中の洋服を取り出す。

私はハッと我に返ると、慌ててクローゼットの上にあった旅行バッグを手に取り、彼から洋服を受け取ってバッグの中に詰めていった。

ある程度服を詰め終ると、私は朝比奈先輩に声をかけた。
< 85 / 297 >

この作品をシェア

pagetop