クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
「待て、絢香」

俺の制止を無視して絢香がずかずかと廊下を進んでいく。

全くいい性格してる。

俺は額に手を当てながら、絢香の後を追ってリビングに向かった。

「こんにちは。朝比奈悠人の妹の絢香です」

ひよこの事情を知らない絢香が、ひよこの前に立って勝手に挨拶する。

すると、ひよこは「あっ」っと声を上げて、慌ててソファーから立ち上がったかと思うと、カーペットの上に正座した。

「い、池野陽世莉です。お邪魔してます」

ひよこがペコリと頭を下げて絢香に挨拶すると、そんなひよこの顔を絢香は人差し指を唇に当てながらジーッと凝視した。

「池野……。あっ、ひょっとして光仁高校の文芸部にいた?」

「……そうです」

ひよこが小首を傾げながら、絢香を見上げる。

「わあ~、私、高校の時、 密かに陽世莉先輩の書いた小説のファンだったんですよ。『SNOW』大好きでした!」

絢香が明るく笑いながら、ひよこの両手をガシッと掴む。
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