クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】

俺はひよこの気持ちも考えて真田に詳しい事情は説明しなかった。アパートが水害に遭ったなんて不幸な話、他人に知られるのは辛いに違いない。

だが、真田の後ろにいた絢香がお節介にも真田に事情を話した。

「ねえ真田さん、聞いてください。陽世莉先輩、住んでたアパートが水害に遭って、取り敢えずお兄ちゃんがここに連れて来たみたいなんですけど……お兄ちゃん、 陽世莉先輩に部屋を貸すの渋ってるんですよ。 陽世莉先輩も変に遠慮してるし。真田さんも一緒に二人を説得してください 」

余計な事を……。

チッっと心の中で舌打ちして、真田の反応を窺う。

「それは大変だったね、池野さん。絢香ちゃんの言う様に、朝比奈の家にしばらく住めばいいんじゃないかな？ここはセキュリティーしっかりしてるから安心だし、慌てて変な物件契約するよりいいと思うよ」

真田が身を屈めて、ひよこに向かって優しく微笑みかける。

こいつは……他人事だと思って……。