クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
真田とは幼稚園からの腐れ縁。お互いを知り尽くしている仲だ。親友でもあり、ライバルでもあり……時には悪戯にこいつは俺に嫌がらせをする。

「ねえ、朝比奈。池野さんに部屋くらい貸してあげなよ。俺達の大事な後輩で部下だよ。
それに、今は恋人だっていないし、困らないよね?」

真田が俺の方を振り返り、黒い笑みを浮かべる。

俺の今の状況を面白がっているのだろう。

俺が普段弱味を見せないから、俺が困るのを見て楽しんでいるんだ、こいつは。

真田を鋭い視線で睨むと、俺は疲れた顔をしているひよこに目を向けた。

ソファーの端にちょこんと所在なげに座っているひよこ。

ただでさえ小柄なのに、余計に小さく見える。

このまま俺が見捨てれば、彼女はどうなるだろうか?

うちに再就職したばかりだし、今の彼女には十分な貯金はないように思える。

冷蔵庫等の家電も買い直す必要があるし、引越しするにしてもかなりのお金がかかる。

うちの給料が出るのも一ヶ月先だしな……。

今の状況ではまともな暮らしは出来ないだろう。俺が金を貸すと言っても、首を横に振って頑なに断るだろうな。
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