愛の胡蝶蘭<短編>
約束の日曜日。


ふわふわと浮足立つような感覚と、


まさかそんなはずはないという諦めの気持ち。


和には、何も言えなかった。


何も言わずに、この日を迎えた。


時計の針が、カチカチと音をたてる。


何度確認しても、そんなに時間は早く進まなくて。


それでも、あと、数分。


深呼吸を繰り返す。


3....2....1....


カチリ、


『…………っ、』


9時、だ。


なんだ、何もないじゃないか。


夢だったんだ……。


当たり前だ。






ピンポーン



時計を見れば、まだ9時で。


体中に、鳥肌が立ったような感覚。


『……でなきゃっ………ッ、』


確認もせず、扉へ向かう。


開けた先、には。




「お届け物です。」



体中の、力が抜けた。







リビングに、ぺたりと座り込む。


宅配の人から受け取ったそれは、
小さな箱。




差出人は、




『……っ雄、』


三村雄大、彼の名前だ。


箱を震えた手で、開ける。



『…………なにっ、』



白い、封筒が、出てきて。



彼の、少し、汚い字が。



『なんで……っ!』



あるはずのない、字が。



そこには確かにあって。




゛子供の頃、よく行ったあの海に。
11時、集合!!絶対だからな!゛




そう、書かれたそれは。




右下に小さく書かれた、日付は。






まだ、彼が生きていた、あの頃。



2年前の、今日だった。


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