KISS or KISS?―メイクアップ・ハロウィン―
彼は素直に目を開けた。
瞳のダークグリーンが、秋色メイクのおかげでひときわ映える。
「まつげが重いんですが」
「そんなに塗りたくってないわよ。何もしなくても、きみのまつげ、長いもの」
「負荷の重量、片目あたり約50ミリグラム。意外と重たいものですね。なかなか鬱陶しい」
いつも理詰めな彼の発言は、それこそなかなか鬱陶しい。
困った子。
わたしが8つも年上じゃなかったら、いちいち腹を立ててしまったかしら。
ロジカルで硬い頭脳に反して、彼の声はソフトで耳ざわりがいい。
とはいっても、男の声には違いない。
「口を開くと、もったいないわよ。しゃべらなかったら、見事な美女なんだから」
「美女、ね。ぼくの顔立ちが美しいことは否定しませんが、身長180センチを超えた女性はめったにいないと思います。結局、美男子にしか見えないでしょう」