KISS or KISS?―メイクアップ・ハロウィン―
「わたしより10センチ以上高いのよね」
そのくせ、わたしのドレスが入るくらい細いなんて。
去年わたしがハロウィンに着た魔女風ロングドレスは、漆黒じゃなくて、グリーンが入った色味がキレイなんだけど。
弟の同級生である彼は、存在自体が生意気だ。
難なく着こなしたドレスに、黒髪ストレートのウィッグも似合いすぎ。
美女に見えるわよ、十分に。
彼は不意に、わたしを見つめた。
アイメイクに縁取られたまなざしが、ドキッとするほど本当に強い。
「あなたは、今夜、やっぱりパーティに来られないんですか?」
わたしは苦笑いする。
「無理ね。仕事が入っちゃったのよ」
勤め先のヘアサロンはハロウィンフェア開催中。
お客さまにコスプレ用メイクをサービスしている。
予約が殺到して、シフトから外れてるわたしも助っ人に呼ばれた。